「飲み仲間」から「飲まない仲間」へ

40代 男性  シングル (働き盛り



 高校卒業後に就職した会社の同僚が飲み仲間だった。10代から20代の頃は先輩に誘われた時にだけ付いていく機会飲酒程度で、飲まされては潰されて二日酔いになることも度々あった。仕事が休みの日も年齢の近い同僚たちと遊びに行くことが多く、どこに行くにも酒はついて回っていた。次第に酒好きの先輩と同じぐらいの酒量、もしくはそれ以上飲んでも潰れることもなくなっていた。仕事で尊敬する先輩たちに肩を並べられたような気がして、それが何となく嬉しかった。

 

 30歳を過ぎたあたりから毎晩のように飲むようになり、血圧上昇だったり肝機能低下だったりと健康診断でも毎年指摘を受けるようになったが、病院を受診しても「酒は程々に」と医師から忠告されるだけで、酒を止めるつもりは更々なかった(今考えれば単に止められなかっただけだと思っている)。

 

 

 34歳の時には重度の腹膜炎を患いストーマ(人工肛門)の状態になってしまったが、それも毎日多量の酒を飲んでいたことから痛みに鈍くなっており、病院に行くのが遅かったことが原因であった。そんな大病をしたにもかかわらず、その頃から酒量は更に増えていった。36歳の時にお腹は元の状態に戻すことができたが酒量は増加する一方で、38歳の時には高血圧が原因で脳卒中(脳出血)を起こし、「症候性てんかん」の後遺症を患うことになり、その後の2年間で34回程てんかん発作の症状(意識喪失・痙攣)が出て入退院を繰り返していた。当然、入院するたびに飲酒の問題を指摘されるわけだが、一人で酒を止められるわけもなく、誰にも相談することもなく、酒で死ねたら本望とさえ思うようになっていた。

 

 40歳の時に「てんかん発作」で総合病院に入院した際、いつもどおり「症候性てんかん」と診断されたが、幻覚・振戦せん妄といった離脱症状もあったため、家族が保健所等に相談しに行ってくれ、これを契機にアルコール依存症治療専門病院に入院することとなり、退院後は断酒会にも入会し、約2年間断酒継続ができている。

 

 

 脳卒中を発症してからの2年間で何度も繰り返していた「てんかん発作」も、断酒してからの2年間は全く発症することもなく、仕事復帰してからは入院はもちろんのこと、突発的な体調不良で休むこともなくなった。休日には、会社の飲み仲間と遊びに行くことはなくなったが、断酒会で出会った飲まない仲間と過ごす時間が増え、酒がなくても充実した毎日が送れている。これからの人生は、断酒会仲間と楽しい人生を歩んで行きたいと思う。